見えてる世界は曖昧だ
人々は、瞬きを3秒に1回している。
例えば、1日のうち18時間起きていたら、21,600回。
ひとつの瞬きを瞼が閉じ始めて開き終わるまでとして、速さはおよそ300ミリ秒と研究者は発表している。
21,600回瞬いたら、6,480秒。
つまり人々には、1日のうち108分くらい見えない世界が存在する。
映画一本分くらいお時間を見ていないということになる。
毎日の映画一本分には物語があるのだろうか。
仮に80歳まで生きるとしたら、瞬きはおよそ6億回。
時間にしておよそ6年にもなる。
それは、人が生まれて小学校に入学するまでの時間。
一生のうち、生まれてからランドセルを背負うまでの時間にはドラマがあるのだろうか。
それは目を覚ましている時間の1割にもなる。
その見えない世界を見てみたい。
誰もみたことのない世界を。
そう思って、カメラを覗く。
シャッタースピードを瞬きの速度にして、撮影してみる。
すると、ボケたりブレたりした世界が写った。
絵の具をぐちゃっと混ぜたような鮮やかな色彩で、それはとてもきれいに写った。
瞬きしている間の世界は、まさに見たことのない世界だった。
なんの変哲もない日常、いつもの景色を瞬きして、見る。
眼には人や街がいつもと変わらずに写るのに、瞬きしている間はボケたりブレたりしてしまう。
いや、本当はボケたりブレたりしているのかもしれない。
瞬きはボケやブレを無意識に修正する働きがあることが照明されている。
見えてる世界はなんて曖昧なんだ。
わたしは、眼には写らない世界を写している。